5. 多彩な地形がつくる豊かな磯環境

サブテーマB:
アポイ岳の高山植物から自然環境を学び楽しむ

 様似町(アポイ岳ジオパーク)には、多様な地形からなる磯や礫浜が広がっています。アポイ岳周辺ではかんらん岩の転石などが敷き詰められた礫浜や、海食崖下に起伏の大きな岩礁帯があり、また、西方の海岸に並ぶ岩山の周囲には波食棚が発達しています。これらの礫浜や磯を潤し生命を育む海流は、日本海から津軽海峡を通って日高沖へと流れ込んでくる津軽暖流です。さらに、東の襟裳岬付近には、寒流の親潮(千島海流)が南下してきます。そのため、ここでは暖温帯と冷温帯の2つの気候区分の生きものが共存しており、約90種の海藻と約120種の動物が確認されています。

 なかでも、昆布(ミツイシコンブ)はここの海藻の主要種であり、和食に欠かすことのできない出汁のもととして、400年にわたり地域の伝統産品として全国に流通しています。

エンルム岬裏に広がる波食棚

アポイ岳登山道入口付近の礫浜

代表的な海藻

ミツイシコンブ(三石昆布)
褐藻類。帯状で長さ2~6m、幅6~10cm。年中繁茂し、群生して海中林をつくる。食用で商品名は日高昆布。
マツモ(松藻)
褐藻類。細長く円筒状で長さ15~30cm。盛り上がった岩礁に群生する。名前は松の新芽に似ているから。食用。
フクロフノリ(袋布糊)
紅藻類。長さ2~7cmで岩や転石に群生する。名前は成長すると中空の袋状になることと、布用の糊として利用されたことから。食用。

小さな生きもの

イソガニ(磯蟹)
節足動物。甲羅は無毛、やや四角で幅3cmほど。転石の下に群れていることが多い。オスは、はさみの2本の指の根元に味覚を感じるこぶを持つ。
エゾヤスリヒザラガイ(蝦夷鑢膝等貝)
軟体動物。最大で長さ5cm幅3cmほど。転石の裏に張り付いている。名前は岩からはがすと人間の膝のように丸まることから。
エゾバフンウニ(蝦夷馬糞海胆)
棘皮動物。殻の直径は9cmほど。棘はキタムラサキウニより短く、色はさまざま。潮溜まりや潮間帯の外で生息。名前は馬糞に似ていることから。