4. アポイ岳周辺の貴重な動植物

サブテーマB:
アポイ岳の高山植物から自然環境を学び楽しむ

アポイマイマイ ~岩石が生んだ固有種~

 かんらん岩の独特の成分は、植物だけでなく、動物の進化にも影響を与えると考えられています。アポイ山塊とその周辺、幌満川沿いには固有種のカタツムリ『アポイマイマイ』(1970年に新種として記載)が生息しています。これは、北海道に生息するヒメマイマイ属のタカヒデマイマイの近縁種で、かんらん岩が積み重なるすきまなどに生息しています。殻の大きさは成体で1cm程度、褐色で表面に硬く細い毛が生えているのが特徴です。

カドバリヒメマイマイ ~分布は岩石と深い関係~

 『カドバリヒメマイマイ』は、島牧村の大平山や様似町などごく限られた地域でしか見ることができない摩訶不思議なカタツムリです。殻の形がまるで「ふたをしたラーメン丼」なのです。まっ平らなふたには「渦巻き模様」がくっきりと。

 カドバリヒメマイマイは、石灰岩の土地にしか生息しません。しかも石灰岩なら必ず生息するわけでもなく、沢が一つ変わるだけで生息したりしなかったりします。そして珍しいゆえに採集者が後を絶たないのが現状です。絶滅を防ぐため手厚い保護が必要です。

エゾナキウサギ ~氷河期の生き残り~

 『エゾナキウサギ』は、日本では北海道だけに生息する動物で、その分布は北見山地・大雪山系・夕張山地及び日高山脈の山腹から高山帯にほとんど限られています。ナキウサギは岩石がゴロゴロと堆積するような場所にしか生息できませんが、このような環境は通常標高が高いところでしか形成されないためです。しかし、アポイ岳の山麓では、標高50mという低地でのナキウサギの生息が確認されており、これは、北海道における最も低い標高での生息確認記録となっています。

ヒメチャマダラセセリ ~日本でここだけのチョウ~ 国指定天然記念物1975(昭和50)年指定

 セセリチョウの仲間である『ヒメチャマダラセセリ』は、日本ではアポイ岳周辺でしか見られないチョウです。朝鮮半島やヨーロッパには、広く分布しています。1973年に北大の昆虫研究会に所属する学生によって発見され、翌年には国の天然記念物に指定されました。5月前後の短い期間だけ成虫を見ることができます。アポイアズマギクなどの蜜を吸って生活しますが、幼虫の食草は「キンロバイ」です。

キタゴヨウ ~北限の自生地~ 「幌満ゴヨウマツ自生地」国指定天然記念物
1943(昭和18)年指定

 『キタゴヨウ』は、ハイマツとともにゴヨウマツ類に属し、1つのさやから5本の葉(針葉)が出ていることが名前の由来です。キタゴヨウは本州中部以北から北海道南部にかけて分布しますが、種間競争力に乏しいために、尾根上に細々と小規模に生育するのが一般的です。しかし、幌満岳山麓のキタゴヨウ自生地は分布の北限であることに加え、山腹全面に優占しているという極めて珍しい特徴を有しており、国指定の天然記念物となっています。

ハイマツの針葉と種子

キタゴヨウの針葉と種子
(種子に翼がある)